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文学賞受賞作
ダックスフントのワープ
ダックスフントのワープ
文藝春秋
price : ¥500
release : 2000/11

不思議な透明感

実家に忘れてきたので、2冊目を買いました。透明感を持ちながらも、ずっと心に残り、また読みたくなります。
メインストーリーに挿入されている、主人公の語る「ダックスフントのお話」。そこだけ取り出して一冊の絵本にしたいほど、美しく鮮烈な印象を受けました。藤原伊織さん、童話作家になってほしい。。。

ジャン・クリストフ 3 改版 (3)
ジャン・クリストフ 3 改版 (3)
岩波書店
price : ¥903
release : 1966/01

座右の書

正確には私が読んだのは、家の片隅に埃まみれになっていた筑摩書房出版の本なのですが、訳者が同じ豊島氏であるため、ほぼ同じ内容であると信じてレビューを書かせてもらいます。

初めてこの本を読んだのは高校2年の頃で、途中何度も挫折しながら、夏休み丸々かけてなんとか読み終えることができました。

正直、あまり興味のない細かな描写に戸惑ったり、慣れない登場人物の名前について行けなくなることありました。しかし、あれから10年以上経ちますが、これ以上の本に出会ったことがありません。

おおよそ人生で直面するありとあらゆる出来事が凝縮しているので、人生の岐路に立つ度に、該当する個所をつまみ読みし、参考にしてきました。個人的には、無理をしてでも是非若い人に読んでもらいたい??品です。

ここ過ぎて―白秋と三人の妻〈下〉
ここ過ぎて―白秋と三人の妻〈下〉
新潮社
price : ¥500
release : 1987/03

秘すれば花
秘すれば花
講談社
price : ¥580
release : 2004/07

本当に花のある人生の指針として、オススメなのです。

「秘すれば花」このフレーズの独特の響きがとっても艶があって、いいですよね。人間の才能と、それを生かす修行のあり方、花のある存在として活きる事とはどのような事なのか。一瞬たりともとまることの無く移り変わり彩りを変えてゆく花の命のように、人生の花のあり方は変化するという、深い人生の書です。

武士道や葉隠れなどとはまた趣は違いますが、どちらも今の私たちにとっても役に立つ人生の指針かもしれません。

花を知る 花を悟る 花を極め 
風を会得し、花を伝える

秘すれば花 秘せずば花なるべからず

人生、花も実もある生き方をするためには、どのような心得、嗜み、修行が必要なのか、、本当に花のある人生の指針として、オススメなのです。

ここ過ぎて―白秋と三人の妻〈上〉
ここ過ぎて―白秋と三人の妻〈上〉
新潮社
price : ¥540
release : 1987/03

春燈
春燈
新潮社
price : ¥860
release : 1991/03

試練の季節?!

落ちた高女の制服を真似て、制服に筋を入れて”第一高女ごっこ”をする場面なんか、本人は無邪気にやっているだけだろが、綾子のいやらしさが伝わってきてよかったと思う。綾子の自由気ままな振る舞いの描写と、3回それぞれ受験を振り返る心象の描写が非常に興味深い。作者は綾子のわがままをガツンと打ち付ける父や先生や異母弟妹による(あるいは家業による)残酷な出来事を繰り返し描写するのに、綾子本人は依然として本質的に自分の中に思う自由な振る舞いを続ける『ちぐはぐさ』が痛々しい。
宗教と日本人―司馬遼太郎対話選集〈8〉
宗教と日本人―司馬遼太郎対話選集〈8〉
文藝春秋
price : ¥520
release : 2006/10

街道をゆく (12)
街道をゆく (12)
朝日新聞社
price : ¥441
release : 1983/03

山塊

十津川という山に囲まれた『場所』を中心に作者が考察を重ねていく。
特に幕末の動天期のエピソードを中心にひきながら、
かの国の実情と変遷を淡々と表していく。
どの土地にも固有のいわれがあるのであるなと強く感じたしだいである。
夢の裂け目
夢の裂け目
小学館
price : ¥1,260
release : 2001/09

一夜官女
一夜官女
中央公論社
price : ¥580
release : 1995/05

女性の視点からカッコよく描かれている

司馬さんらしく、男女の交歓を心理描写巧みに描き出している。「一夜官女」の岩見重太郎、「侍大将の胸毛」の渡辺勘兵衛らの戦国型武士の生きざまが、女性の視点からカッコよく描かれている。
落日の王子―蘇我入鹿 (上)
落日の王子―蘇我入鹿 (上)
文芸春秋
price : ¥490
release : 1985/04

今読むべきお勧めの一冊!

2005年お正月に放送された「中臣鎌足」を観て、この時代に興味を持ち買いました。時代小説では江戸時代や幕末ものが好きだったのですが、今回はまりました。特に下巻に入って大化の改新に至るストーリー展開は、ドキドキハラハラしながら一気に読み進められます。鎌足側を応援しつつも、敗者ではありながら、人間くさい蘇我入鹿もどこか憎みきれず、最後は切ない感じがしました。
また、この時代の日本は、朝鮮や中国から政治や軍事など多くを学んでいたことなど、今このご時世に改めに考え直す良い機会にもなりました。若い人にも読んでもらいたい一冊です。
サンクチュアリ
サンクチュアリ
新潮社
price : ¥620
release : 1973/01

……

 もちろんとっても読みにくい小説でした。暴力的なイメージ、というのが私がフォークナーに対して抱いていた印象です。たしかに陰惨な事件が起こるには起こるのですが、私には前半部のほうがおもしろかったように思います。
 前半の、テンプルが囚われている状況は、ほかのどんなホラー映画なんかよりもおそろしいと思いました。この小説には、あんまり善人がいません。ガウァンの行動にも唖然とするばかり、さらにポパイとテンプル。翻訳がいいのか、フォークナーがすごいのか、私はこのときのテンプルの言動に吐き気がするほどに嫌悪感をいだきました。ポパイではなく、テンプルにです。
 この小説を読んでいると、胸のあたりにものすごいむかつきを覚えるのです。私はあんまりすばやく読みすすめることができませんでした。その不快感はいったい何に由来するのか、嘘や欺瞞を正義をごった煮にしたようなこの小説のなかのいったい何に由来するのか、私にはよくわからないのです。
 それにしても読みにくかったです。
ドリトル先生と月からの使い
ドリトル先生と月からの使い
岩波書店
price : ¥756
release : 2000/11

不思議な物語

動物と話ができるドリトル先生のシリーズ。
これはそのなかでも異色作だと思います。というのも、月が舞台となるから
です。
しかも蛾に乗って!
当時、月って今以上に未知の場所だったんだろうな、と思いつつ読みました。
月にいる動植物がけっこう不気味で、すごく怖かったです。
全体的にほのぼのタッチのシリーズですが、これだけはSFみたいでドキドキ

でした。

月光浴
月光浴
小学館
price : ¥3,990
release : 1990/10

半々と言う所??

私は中古で買ったのですが、内容は半々といった所です。
月の光のみで…と聞き、幻想的なイメージを持つ方は多いと思います(自分もそうでした)が、見てみると確かに、幻想的な青白い光に照らされた植物達の写真もあります。
ですが、暗闇に浮かび上がるような「まさに想像通り!」の写真もあれば「え?本当に夜に撮ったものなの?」というような写真もあります。
写真の美しさだけでも十分に楽しめますが、神秘性や幻想的なものを強く求めている人には、少々物足りないかも…。
まさに半々といった感じですが、中古購入なら持っていて損はないと思います。
特に、最後の方のボルケーノの写真は素晴らしいと感じました。
夜の青暗い地面の裂け目から、躍動するマグマの朱が浮き上がって…カッコイイです。
テースト・オブ・苦虫〈3〉
テースト・オブ・苦虫〈3〉
中央公論新社
price : ¥1,785
release : 2006/11

閉鎖病棟
閉鎖病棟
新潮社
price : ¥580
release : 1997/05

ストレートに

精神病者目線の話。
患者の日常をメインにストーリーは進む。
精神医療や生について考えさせる、良作ではあるとは思うのだが…
「死」や「殺人」をやや軽々しく扱っているように感じるのは私だけだろうか。
ネタバレになるため詳細は避けるが、その点が気になってか私は感動できなかった。

また、問題提起に重きを置いてる作品のようで、ミステリー的なストーリのひねりとかはあまりありません。
ドリトル先生月から帰る
ドリトル先生月から帰る
岩波書店
price : ¥756
release : 2000/11

天使の牙〈上〉
天使の牙〈上〉
角川書店
price : ¥600
release : 1998/11

苦悩の恋愛刑事物語

肉体と脳が入れ替わる
そしてその相手は刑事に終われる奴の情婦
飛鳥刑事はその苦悩の中
元相方の刑事とどうかかわって行くのか
架空の中のこことではあるが
人の心理を衝く大作長編恋愛ストーリー
ビラヴド
ビラヴド
集英社
price : ¥950
release : 1998/12

奴隷制度の傷が痛く伝わる一冊

ケンタッキー州から夫をおいて子供と共にオハイオ州に義理の母の家に逃げた逃亡奴隷の物語である。セスという主人公は奴隷主がセスと子供の居場所を突きとめてやってきた時に小さな小屋の中で自ら自分の子供を殺してしまう。子供に奴隷になるより死んだ方がましだと思った母の選択であった。生まれたばかりのその子には名前がまだついていなく、墓石にビラビッドと書いて葬り、牢屋に入った。それから何十年後に出所したセスのところにビラビッドと名乗る謎の女性が現れて、セスは気が狂ったかのようにビラビッドに尽くす。奴隷制度がいかに人々を傷つけ、解放されたあとも奴隷の時にレイプされた記憶にうなされ、奴隷という過去に苦しめられる様が見事に描かれている作品である。
今夜は眠れない
今夜は眠れない
講談社
price : ¥798
release : 2006/03

子供向け?

子供向けの作品を書いたのだろうと思って読んだので、
内容の大人向けぶりに驚いた。小学上級からって・・・。
難し過ぎなんじゃ・・・。しかし、それもそのはず、
「今夜は眠れない」(角川文庫)を元に、難しい漢字を
ひらがなにして全体にルビを振り、イラストを新たに
付けた作品だったのだ。

行きつけの店
行きつけの店
新潮社
price : ¥700
release : 1999/12

関係ありませんが、ワタクシも国立市民でした。

山口瞳先生のひと癖ふた癖もある薀蓄グルメ本。なんだかシブイ味のあるお店が満載です。ところで、山口先生って開高健と一緒でサントリーの宣伝マンやってて、手前の一人は芥川賞、そしてもうひとりは直木賞って・・出来すぎじゃないかなあ??それとも文芸春秋ってサントリーの宣伝してるからかなあ?とか?余計な勘繰りしちゃいます。

でもあの昭和30年代40年代の時代って何だか懐かしいです。クールな小津安二郎監督みたいな大人がいました。つまり、明治生まれのおじいさん達がまだ健在。大正生まれの渋くてカッコいいオジ様達は、戦争から無事復員して来て佐分利信や笠智衆みたいに会社の重役さんとなり、復興日本の面目を意地でも取り戻そうと必死に牽引役を務めていた。そして昭和一桁の若いめのオジ様?年取ったお兄さん?達はその下役です。週末返上で夏休みもなく暑い中ハアハア言って?日本経済高度成長の為、家族の為、カラーテレビと洗濯機と冷蔵庫購入の為に汗水垂らして働いていました。

そういう働くオジサマ向け週刊誌にこういう開高健や山口瞳先生なんかが執筆していらした。働くエブリマン諸君、ボクは優雅にやってますよ!ですって。???他のサラリーマンは優雅にやってられないから、みんなの代わりに優雅にやってくださったんでしょうね。ここに出て来る高級な旅館やグルメっぽい店なんかにどうして会社の出張費で落とせると思うのか?ずるいぞ!ひとりで本屋さんの接待費でいい思いしちゃって・・なんて今や引退された戦後の働くオジサマならおっしゃった事でしょう。と思うのは私だけ?

何はともあれ、山口瞳先生は、名誉市民山口百恵さんと並ぶ我々東京都国立市民の誇りです。
なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか
なぜ、その子供は腕のない絵を描いたか
祥伝社
price : ¥1,470
release : 2005/04

ちょっとキツイ本

著者ののべている腕のない人の絵、通称「頭足人」は世界中の子どもが、発達の過程で描くものであり、全世界の子どもたちに共通で、言語、習慣、民族、国籍を超えて同じ表現をするもので、はるか昔からその存在が知られています。
私がこの本を読んで疑問に思ったのは、文献をあたる過程でそのような記載にあたらなかったのは何故かということでした。
この本に一貫しているのはこのことだけに限らず、小数の主観的な観察ではなく、きちんとデータを取る、探すという客観的事実を追求しようとするなら誰もがとらなくてはならない基本的な姿勢がまるで欠如してるということ。この人はこんなこといってたんですよ、的な話ばかり。万事が万事そんな調子。
考察についてもきちんとした因果関係を示す事実など何ひとつ示さず、あるのは間接的なほのめかしか、居酒屋の素人の野球談義みたいなオレはこう思うんだよ、みたいな話ばかり。
著者は小説家なのでそういう気分で書いたのかなと思いましたが、事実を追従する本には何も論文みたいに書けとはいいませんが最低限の姿勢、質ぐらいは必要なんじゃないでしょうか。
運命の足音
運命の足音
幻冬舎
price : ¥500
release : 2003/07

五木文学の総決算か?

 ソ連兵に殺された母親について初めて五木が語りだした。

「それから一人が寝ている母親の布団をはぎ、死んだように目を閉じている母親のゆかたの襟元をブーツの先でこじあけた。彼は笑いながら母の薄い乳房を靴でぎゅっとふみつけた」(16ページ) 

「大河の一滴」や「他力」を読んで、私は五木寛之は自分のもっている闇を乗り越えたのだと思っていたが、それは間違いだったかもしれない。

母親の写真を送ってくれた未知の読者に「説明のしようのない理不尽な怒り」を感じるというのは尋常ではない。野坂昭如のように自分の戦争体験を表に表現できる人はまだ傷が浅いのかもしれない。五十数年間、心の中にこの体験を秘めて創作活動を続けてきた五木の傷の深さには声の出しようもない。五木のトラウマはいまだ癒されていない。

  しかし、一方、それまで語れなかったことを「語りだした」ということは、癒しへの第一歩を踏み出したのかな、とも思ったりもする。

 ひょっとすると、五木の今までの膨大な創作活動は、この事件を告白するまでの準備作業だったのかもしれない。

恋する男たち
恋する男たち
新潮社
price : ¥460
release : 2005/03

それぞれの作家を試食できる○

各作家の短編を一編ずつ納めた恋愛小説。
「終の季節」(唯川恵)は特にオススメ。
『ため息の時間』(新潮文庫)にも収録されている。

基本的にはオリジナルだが、篠田節子・小池真理子・唯川恵の作品は他の短篇集にも収録されている。

それぞれの作家をちょっとかじることができ、新しい作家の開拓をしたい人にはオススメ。
平成お徒歩日記
平成お徒歩日記
新潮社
price : ¥500
release : 2000/12

宮部みゆきの意外な作品!

時代物作家、宮部みゆきが江戸時代のコンセプトに従って平成の世を徒歩で歩きまくる!という企画の本です。忠臣蔵の吉良を討ち取った帰り道や罪人が引き回しになった道をたどるなど、企画自体もかなり面白いです。
企画の中にコラムのように時代考証が(うんちくですね)入っているんですが、この書き方が見事というか、押し付けがましくなくてとても好感がもてますし、非常に興味がわいてきます。オススメは流人を扱った八丈島の章。八丈島なんて三原山火山くらいしか知らなかったけれど、歴史に満ち満ちた島だったんですね。
読むのにそれほど時間もかからないし、梅雨時のお部屋でのすごし方にオススメの一冊です。
仁淀川
仁淀川
新潮社
price : ¥580
release : 2003/08

戦争でも焼きつくされなかった農家の因習

「終わりの始まり」で壇ふみさんが書かれているとおり、”戦争でも焼きつくされなかった農家の因習”に戸惑う綾子の姿が面白い。姑が朝から働く中、ラジオで英語の勉強に励んだり、田畑を駆け回る美耶の姿に教育の遅れを心配したり。自分の置かれた境遇をよしとしない綾子。挙句、日記をつけて文筆の足がかりとなるのだが、綾子が農作業にすっかり馴染んで忙殺されたり、親にべったり部屋に篭って遊ぶ子よりも田畑で駆け回る子のほうがよしとしていたら「櫂」連作も無かったのだ…そう思えば「朱夏」の極限状態で人間なににでも慣れるものだ…と思っても人間の『性格』と『志向』はあまり変わらないのか?!
黒白 下巻 新装版   新潮文庫 い 17-18 剣客商売 番外編
黒白 下巻 新装版 新潮文庫 い 17-18 剣客商売 番外編
新潮社
price : ¥740
release : 2003/05

センスが光るタイトル

数ある「剣客商売」の中で一番好きな話です。山場は何と言っても小兵衛が悪漢を退治する場面ですが。この話は完全に脇に徹してますね。若い頃のエピソードが描かれているのがファンにはたまりません。そういえば仕事をサボって営業車の中でむさぼり読んでいたのを思い出します。とにかく正・番外あわせて、読み出したらとまらないシリーズですね。もしかしたらこの上下巻から読むと良いかもしれません、剣客商売の描かれる何年か前の話なのですから。
ユリシーズ〈3〉
ユリシーズ〈3〉
集英社
price : ¥1,200
release : 2003/12

日本語がわからない第三巻

ジョイスの『ユリシーズ』、文庫第3巻は、たった2挿話しか入っていない。それでこの厚みである。
まずひとつめは、いきなり古文・漢文調で始まる。ジョイスが、古代中世をはじめ、
昔の英語作品の文体を模写しているため、翻訳でも同時代の近接ジャンルの文体で訳しているのである。
ひとつめの挿話は、産院で子供が産まれるので、それにからめて生殖など性的なallusionが語られるが、
いかんせん古文なので、ほとんどわからなかった。
また、英語は、かなり早い時期から見た目には現在とほぼ一緒の文章になるため、
ここまで古っぽく翻訳する必要はないように思われる。
マロリー(1480)でさえ、現代の日本人が見ても大体はわかるであろう。
そのため、昔の文学の文体模写を、そのまま古文、文語調にうつしてしまうと、相当英語と日本語でギャップが出てしまう。
さて、つづく挿話では一転、劇のスタイルになり、それまでの4?5倍のスピードで読めるようになる。
内容は、現実と虚構がないまぜになってややこしいが、娼家に向かったスティーブン・ディーダラス、
ブルームらの様子をベースにしつつ、それまでの出来事や心にかかっていることなどが出てくる劇である。
巻末には、相変わらず本一冊分はある詳細な注と、翻訳者の小論、地図つき。
秘本三国志 (4)
秘本三国志 (4)
文芸春秋
price : ¥540
release : 1982/01

フォークナー短編集
フォークナー短編集
新潮社
price : ¥460
release : 1955/12

哀しいエミリー嬢にせめて薔薇の花束を

フォークナー最高の短編作品は「熊」か「乾いた9月」であろう。しかし、最も印象深いのは「エミリーに薔薇を」だ。この後味はポーにも似ているが、なにかポーよりも鮮烈で後々まで引きずる苦味がある。後味の悪さこそが文学の証しであろう。
勿論彼の本領は長編ではあるが、短編を放っておくのは余りに勿体無い。
シャドウゲーム
シャドウゲーム
角川書店
price : ¥540
release : 1998/07

むかし・あけぼの―小説枕草子〈上〉
むかし・あけぼの―小説枕草子〈上〉
角川書店
price : ¥735
release : 1986/06

耽読するには……

この作品の魅力は、何と言っても「平安もの」が親しみやすい文体になっていると言う点だと思う。
勿論、文体の巧みさだけでなく「高慢で自慢ばかりするインテリ」のようなイメージの清少納言を、見識があり、
感性豊かでサッパリした気性の女性に仕立て上げていると言う人物造型は流石。
こう言った「田辺オリジナル」が好きな人はグイグイ引っ張られてあっと言う間に読み終えてしまうに違いない。
けれど、良くも悪くもアクのある文体であることは否めない。
斯く言う自分は途中で挫折しそうになってしまったのだが、時折現れる美しい描写のお陰で挫けなかった。
やはり巧み、と言うことなのだろう。星4つ。
愛と救いの観音経
愛と救いの観音経
嶋中書店
price : ¥1,000
release : 2006/08

観音経の妙なる素晴らしさ、強さを易しい言葉で置き換えた隠れた名著!

観音経は般若心経と並んで世に普及しているお経の中でもかなり有名なお経でありますね。僕は個人的にはポケット版の観音経(松原泰道師訳付)を使用しておりますが、瀬戸内寂聴さんの本著は観音経に対する見識の深さ・例えの引用の説得力、更にはそれを分かりやすく誰が読んでも理解できる入門の著書、かつ名著ではないか…そう思っております。

元々は日蓮が到達し、釈尊の経典の中でも一番強い力を持つ法華経、その第二十五番(正確には妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五)という位置づけにあるお経が観音経でありますが、読みやすい・分かりやすいという意味では先に掲げた般若心経に次ぐお経であります。

般若心経が「空」という「何に対してもこだわらない境地」という宗教観・心のあり方を説いたお経の代表とすれば、観音経は「観音菩薩の力を信じる事で何ものからも手が出せない程、身を守ってくれる」という、これまたとても有り難いお経であります。(非常に簡便に書きましたが。)そのお経を本著で寂聴さんは具体例を挙げつつ、万人が分かり易く、読み易い解釈まで掘り下げていただいた窮極の有り難い本、と言うべき名著でありましょう。

僕個人は無宗教でありますが、良いものは取り入れる、という昔からの性格でありますので、宗派に拘らず一読をお薦め致します。合掌。
鬼平犯科帳 9 ワイド版 (9)
鬼平犯科帳 9 ワイド版 (9)
リイド社
price : ¥650
release : 2001/02

下北サンデーズ
下北サンデーズ
幻冬舎
price : ¥1,575
release : 2006/07

青春を無理やり続けること

前からなんとなく疑問に思っていた、小劇場の劇団
特有のテンションの高さの源は何だろうという答えが
書かれているような気がしました。

一番感情移入したジョー大杉という30代のぱっとしない
俳優が、見栄や孤独や俗っぽい夢を全てを覆い隠して
無理やり元気を注入する、下北サンデーズの円陣コールが
最高でした。
鬼平犯科帳 (25)
鬼平犯科帳 (25)
リイド社
price : ¥650
release : 2004/03/23

ユリシーズ〈4〉
ユリシーズ〈4〉
集英社
price : ¥1,200
release : 2003/12

最終章は女の独白にて終わる

16、17、18挿話を収録したユリシーズ文庫最終巻。
まず第16挿話では、スティーブン・ディーダラスと主人公ブルームが喫茶店に行き、仲が良くも悪くもない微妙な雰囲気のなか、
二人が語らったり、他の客のほら話を聴いたりいろいろ夢想したりする様子が描かれる。ユリシーズらしい文体の章。
第17挿話では、ブルームがスティーブンを自宅に招き、ココアを飲む様子が、問答形式で描かれる。
章全体が、問いと答えで構成されており、まるで論文のようになっているのが面白い。
第18挿話は、全てがブルームの妻モリーの独白。一章句読点ナシという悪名高き挿話である。
過去の交際やブルームのこと、今日浮気したボイランのことや生理のことまで、性的なことも含め、
寝る前に頭に浮かんだことを全て書き取ったような章になっている。
翻訳も勿論句読点ナシで文字を羅列しているが、驚くほど読みやすく出来ており、むしろ他の挿話より楽に読めた。
巻末には本一冊分ぐらいある注と、エッセイ・解説つき。因みに訳者のエッセイは何と旧かなまじりでやや読みにくかった。
香乱記〈3〉
香乱記〈3〉
新潮社
price : ¥500
release : 2006/04

秦の滅亡

いよいよ第三巻で、戦争シーンの連続ということになります。
滅亡に向かいつつある秦ですが、戦力はやはり凄く、激戦の連続になります。そんな中で、主人公田横の素晴らしい人となりが、各所で輝きを見せています。このあたりの書き方の無理の無さは、作者の上手さでしょう。これだけの人物が登場しながら、自然に人間関係が頭に入って、どんどん読み進められるのも、宮城谷作品ならではでしょう。
天空の舟―小説・伊尹伝〈下〉
天空の舟―小説・伊尹伝〈下〉
文藝春秋
price : ¥620
release : 1993/09

商 誕生 教科書では 殷と覚えますよね

最後まで楽しめる作品でした。太古の歴史をこれほどま
でに生き生きと創作できる人はなかなかいないだろうと
思う。想像力と資料の収集・研究、作家ならではの解釈
がこういう素晴らしい物語を作り出しのだろうと思う。
正直申し上げますと、孟嘗君を先に読んでおりまして、
これが尋常じゃなく面白かった。ついで、重耳も楽しま
せてもらった。そして本作、やはり面白い。

 特に本作は全編の冒頭と結びの部分が非常に美しく描
かれている。
柳生武芸帳〈下〉
柳生武芸帳〈下〉
文藝春秋
price : ¥990
release : 2006/04

剣豪小説の最高峰

この作品は過去何度も映像化されています。それだけ魅力的な題材という事です。武芸帳を巡り柳生十兵衛が、宮本武蔵が、霞の双生児忍者が正に「鎬を削る」死闘を繰り広げ次々と倒れる剣士達。魅力的な登場人物が繰り広げる一大ロマン。果たして武芸帳に隠された謎とは? 私の棺の中に入れて欲しい一冊。読まないで済ますに勿体ない大傑作です! あなたもぜひ一読を!
柳生武芸帳〈上〉
柳生武芸帳〈上〉
文藝春秋
price : ¥990
release : 2006/04

読み出したら止まらないおもしろさ

戦乱も治まり、太平を謳歌しはじめた江戸三代将軍徳川家光の時代、将軍家剣術指南役柳生家に伝わる、それが世に出れば幕府の権威は失墜、再び戦乱の世に戻るほどの秘密が隠されているといわれる武芸帳を巡って、但馬守宗矩、十兵衛三厳、兵庫介利厳ら、当の江戸・尾張の柳生一族、疋田陰流の使い手、山田浮月斎の一派、滅亡した竜造寺家の再興を夢見る遺臣の一味、さらには老中土井利勝、松平伊豆守ら幕府の重臣たちも加わっての一大争奪戦。果たして誰が柳生武芸帳を手に入れるのか?そこに書かれている秘密とは?
有名無名、実在架空の剣豪たちが多数登場、誰と誰が仲間で誰が敵で、この人はなぜ武芸帳を狙っているのか、今は誰が武芸帳を手にしているのか、気を抜くとわからなくなってしまいそうなくらい次々と差し挟まれていく挿話の数々、命を懸けた真剣勝負の緊迫感、「剣を出世の道具にした」と、よく敵役にされる柳生宗矩の、一流の剣の腕を持ち冷静沈着、胸の奥に恐るべき鬼謀を秘めた本作での人物像などなど、魅力を挙げていったらきりがないくらい。
いやぁ、おもしろかった。かなり長い話ですが、読み出したらページをめくる手が止まりません。傑作です。
恋愛詐欺師
恋愛詐欺師
文藝春秋
price : ¥480
release : 2007/03

11通りの空気

岩井氏独特の「淫ら」なカラーがむんむん漂う11篇。彼女の社会観は常人には理解の粋を超えていますが、その退廃的、腐敗的ななかに逞しい女性の姿が浮かび上がります。
すべての話の落とし前のつけ方が、まさしく「岩井流」。ショッキングなものあり、寂しいものあり、楽しめる本だと思いますよ。
しのびよる月
しのびよる月
集英社
price : ¥620
release : 2001/01

悪人列伝―中世篇
悪人列伝―中世篇
文藝春秋
price : ¥570
release : 2006/12

きものがたり
きものがたり
文藝春秋
price : ¥900
release : 2002/03

写真も文も楽しめる一冊

着物の写真も美しく、またそれを着こなす宮尾さんのはにかんだ笑顔もキュートで素敵です。そして着物にまつわるいろいろな思いが、語りかけるように心に響いてくる、優しい文体も魅力的でした。
あえて趣味の悪い言い方をすれば「有名女流作家箪笥の中をそっとのぞく楽しみ」もある本と言えるかも…
着物初心者の私ですが、初心者のこの時期だからこそ、この本にめぐり合えて本当によかったと思っています。
晴子情歌 下
晴子情歌 下
新潮社
price : ¥1,890
release : 2002/05/30

晴子のしたたる青春、結婚、そして老い。過酷な近代日本を生き抜いた女性史でもある。

高村薫を読み込んできたファンとしては、これまでの作品と比較してあまりの作風の変化に、最初は違和感を覚えるかもしれない。だからこそ逆に、長年のファンも、この作品から初めて?村薫の小説を読む人にも、斬新な筆致が味わえるだろう。

本書で主人公とされる晴子の出生から青春時代、結婚、そして老いに至るまで、戦前戦後の過酷な歴史の渦に翻弄されたといっても過言ではない。ひとりの女性史として捉えるにはあまりにも重いテーマであるとともに、登場人物のひとりに語らせている外地での戦争体験が、筆者の史観をうかがわせる。

この本の登場人物は非常に多く、また入り組んでおり、しかも先述の通り、登場人物自身が重苦しい時代を背負っていくことを余儀なくされる。読書の際は、登場人物相関表、および年表を自身で作成しながら読み進むと、後々の助けとなろう。

初夏に一時帰国した際、北海道に飛んで日本海側の町、初山別を訪れた。かつて鰊の群来で栄えたというこの町で、晴子が永遠の恋人となる人物に出会った様子を、荒々しい日本海を眺めながら想いをゆくらせた。ついで青森にわたり、西津軽の七里長浜を訪れた。七里長浜は、下巻の最後で晴子の息子・彰之が対峙する海でもある。彰之の母への想いを推しはかりながら、暮れなずむ日本海を目の当たりにしていた。
熱血ポンちゃん膝栗毛
熱血ポンちゃん膝栗毛
新潮社
price : ¥1,365
release : 2006/12

うーん。。。。。。

私は、ずっと詠美さんのファンです。
ポンちゃんシリーズも欠かさず読んでいます。
でも、今回のポンちゃんは結構飛ばし読みしてしまいました。
うーん。。。。。。。って感じです。。。。。

花のレクイエム
花のレクイエム
新潮社
price : ¥460
release : 2002/12

淡々と、でも熱がある。

題名に惹かれて買った。だって、花「の」レクイエムって気になる題名だ。
買って正解。どの話も、少し悲しげだけど、読んでるとき周りが無音になる感じだけど、その静けさと物悲しさが良い。

山本容子さんの銅版画がついているが、後書きによると、毎月テーマの花だけ決めて、それぞれが話し合いをしないで完成させたらしい。でも、不思議に違和感は無い。むしろ、別々に見ても素敵なので、一石二鳥な感じ。

正直、12花だけじゃもの足りない。もっともっと続きが読みたい。

西郷と大久保
西郷と大久保
新潮社
price : ¥740
release : 2000/00

悲しくも美しい男の友情。

西南戦争で結果的に幼なじみで親友を結果的に切り捨てた感のある大久保。実際には彼なりの理想の実現であり、その根底にはいつも西郷への敬慕と友情がありつづけた。そんな彼らの若くまさに雄飛せんとするころに焦点をあてた作品である。ストレートに理想にむけ進む西郷に対し、目的に向け着実ひとつひとつ変化球をおりまぜながら進む大久保。やりかたも性格も異なるこのふたりに共通していたものは互いの理想、そして友情である。歴史的結果だけをみたのでは感じることの出来ない世界がここにあります。
闇夜に怪を語れば―百物語ホラー傑作選
闇夜に怪を語れば―百物語ホラー傑作選
角川書店
price : ¥660
release : 2005/03

百物語参考書っていう感じかな

岡本綺堂、森鴎外から村上春樹まで、実話百物語風小説からエッセイ風あり、バラエティに富んでいます。怪談話よりも、古くからの百物語がどういう風に描かれてきたのか,
ということに焦点を当てて読んだ方が楽しめます。
 怖い話が羅列されていると思って読んだ私は、ちょっと当てが外れましたが、森鴎外の「百物語」の後に、森銑三が「森鴎外の『百物語』」として、解説されていたりして、なかなか興味深い。
 序章として収録されている編者の東雅夫と京極夏彦の対談も、序章というよりは物語の一遍ともなりうる内容で、今日の怪談出版事情が垣間見えて面白いです。
日はまた熱血ポンちゃん
日はまた熱血ポンちゃん
講談社
price : ¥560
release : 2005/10

文壇の権威。お戯れらしい。

 下目線で、程度を、敢えて下げた感のこの書物。
文学とこれも呼ばなければいけないわけですか?
 戯れるならば、もっと捻りを効かしたり、エスプリを混交させたり、出来ないんでしょうかねえ?
 「文学」の程度下げているだけで、
        多くの声なき、無名者がいることをお忘れなく。
未来はあなたの中に
未来はあなたの中に
朝日出版社
price : ¥893
release : 2003/03

編集者(社)の志の低さが気になるが・・・

2000年10月24日に、
京都市下京区の市立洛央小学校で講演した内容を編集。
本来は口述したものを文章に起こして再編集するのですが、
部分部分を抜粋した構成になっている。

その結果・・・
40頁の書で、瀬戸内氏の文章は11頁しかなく、
英文と挿絵のタイミングで、話が飛ぶので若干読みにくい。
せっかく良い話を語られているのに、
それを伝えようという意思が編集に見られないのは非常に残念。
子供に読ませようと思って購入しましたが、
全体の構成が悪く、チョッとがっかりしました。

とはいえ、瀬戸内氏の言葉には違いなく、
優しさと強さを備えた言葉の数々は、
氏のファンなら納得するものと思います。

それと、英文が素晴らしい。
高校生の英語の勉強テキストに使えます。

魚籃観音記
魚籃観音記
新潮社
price : ¥420
release : 2003/05

筒井節が帰って来た

比較的最近の短編集。一時、"文学"の方へ顔を向けていた作者が久々に初期のドタバタ・ナンセンスものに帰って来た感があるが、全体的にトーンが落ち着いているのは、様々な障壁を乗り越えて一皮向けたせいか。

タイトル作「魚籃観音記」は故事を基にして究極のエロスを追及したもの。「弁天さま」では伏字を連発していたのに比べ、直截的な表現を用い、読む者を喜ばせる。表現自粛に作品で反駁したものか。「市街戦」は日常と非日常の倒錯を描いた筒井らしい作品。「作中の死」は小説における登場人物とモデルの関係をブラック・ユーモア的に扱ったものだが、柳美里事件が影響しているのかもしれない。「谷間の豪族」は筒井が良く扱う、通常世界の人間が異界(何故か谷間が多い)に抱くイメージ・ギャップをシニカルなタッチで描いたもの。

個人的には、筒井の作品の中では本作のようなドタバタ・ナンセンスもののファンなので、待望の作品集である。風刺と毒とエロスが満載の傑作短編集。
仕掛人藤枝梅安 14 (14)
仕掛人藤枝梅安 14 (14)
リイド社
price : ¥550
release : 2005/04/12

冬物語
冬物語
文藝春秋
price : ¥530
release : 2002/01

心癒されます

医師としてというより一人の人間として、生と死をあるがままに受け入れる作者の姿勢が伝わってくる短編集です。重いテーマであるにもかかわらず、信州や軽井沢の自然に心を癒されながら肩肘張らない作者の生き方が読者の心を和ませてくれます。
時間に追われ忙しい毎日をやり過ごしている自分にとって、ふと立ち止まって「もう少しゆっくり人生を過ごしてみようかな」という気持ちにさせてくれる、そんな一冊です。
星々の悲しみ
星々の悲しみ
文芸春秋
price : ¥460
release : 1984/01

死の影がちらつく中、どうしようもない切なさと哀しみが立ち上がってくる

 死の影がちらつく中、自分が本当に生きていると実感できるものを掴みたいと願う主人公の男たちの、人生での忘れがたい体験にスポットライトを当てて浮かび上がらせた作品集。静けさの中から、どうしようもない切なさと哀しみが立ち上がってくるような話の肌触りを感じましたね。みずみずしく、しなやかな感受性で、さっと掬い取って見せてくれた上質の短篇を堪能させてもらいました。
 昭和五十四年(1979年)?五十六年(1981年)にかけて初出掲載された短篇、七つを収めた一冊。表題作「星々の悲しみ」以下、「西瓜(すいか)トラック」「北病棟」「火」「小旗」「蝶」「不良馬場」の順に収録されています。
 ≪その年、ぼくは百六十二篇の小説を読んだ。十八歳だったから、一九六五年のことだ。≫の一行から話が滑り出す「星々の悲しみ」。予備校に通い始めた主人公の人生にあって、忘れ得ぬ出会いと鮮烈な体験が綴られてゆく話は、格別、ラスト六行がとてもいいですね。話の叙情感に満ちたきらめきという点で、チェーホフの「中二階のある家」に通じるものを感じました。
 「小旗」も魅力的な短篇ですねぇ。本筋とは離れた所から、ひょいと飛び出してきたシーン。ひとりの青年が、赤い小旗を力いっぱい振るシーンが、実に鮮やかに目に焼きつきました。
 不思議な理容店「パピオン」(フランス語で「蝶」のこと)の佇まいが、朧に、妖しげに明滅する「蝶」という作品も、なかなかよかった。ひやりとする、雰囲気のあるホラー味に魅せられました。
夏の流れ―丸山健二初期作品集
夏の流れ―丸山健二初期作品集
講談社
price : ¥1,313
release : 2005/02

初期・中期のスタイル(文体)を熱望

 男性芥川賞作家では、まだ史上最年少受賞保持者である丸山氏のデビュー作『夏の流れ』に対し、賞賛した選考委員は、瀧井孝作氏や三島由紀夫氏などでありました。
 特に、作品や文体等に厳しいコメントをしてきた、瀧井氏は丸山氏の作品を賛辞したこと自体、彼の力量はデビュー作にしてたいしたものであったといえましょう。この文庫本に収録された諸作品は、古典というに等しい名作ばかりです。改めて再読して、それを再確認したしだいです。
 彼が、現数年書いてきている作品を私は「観念小説」と呼んでいます。できうれば、次作は初期・中期のスタイルで大作を書いていただきたいと熱望しています。
 彼が敬愛する、室町時代の大和絵「日月山水図屏風」(金剛寺)の作者不詳の画家を主人公にした歴史小説を期待したいと思っています。現在日本文学の先頭を切る彼は、やはりトップランナーに相違ありません。初期作品集がそれを証明しています。
爆発道祖神
爆発道祖神
角川書店
price : ¥1,680
release : 2002/07

人前で読んではいけない

相変わらず町田節爆発の一冊。
なぜにこの人はこんなに素晴らしい文章を書けるのでしょうか…!
町田氏の言語感覚は天才的。
写真に触発されて書かれたものですが、町田氏の創造力の深さを思い知らされる。

どの作品もそうですが思いがけない所で笑かされます。
ふくみ笑い顔になるので周りから変人扱いされかねない。
是非、自室にこもってお読み下さい。
闇先案内人〈下〉
闇先案内人〈下〉
文藝春秋
price : ¥590
release : 2005/05

逃がし屋

2002年版このミスで6位、
2001年文春ベスト10で7位を獲得した。

葛原は国内でトップクラスの「逃がし屋」として依頼者を国外へ脱出させる活動をしていた。ある日彼の元を、警察庁警備局の河内山の使者が訪れる。「密入国中の某国の独裁者の息子を探し出すこと」これが葛原のグループの逮捕を見逃すための交換条件であった。しかし、その重要人物の密入国を支えるのは関西を代表する「逃がし屋」成滝。プロの意地をかけた追跡劇が、やがて国内外の熾烈な諜報戦に発展していく。

実際に起こってもおかしくないような設定の中を、大沢の描く新たなヒーロー葛原が「熱く」駆け抜ける。本作は、単なる冒険小説にとどまらず、「国家の在り方」「我々のもつ愛国心」にも問いかける作品に仕上がっている。

麻雀放浪記(四) 番外編    角川文庫 緑 459-54
麻雀放浪記(四) 番外編 角川文庫 緑 459-54
角川書店
price : ¥580
release : 1979/10

何度読んでも飽きることがない。日本が誇るエンターテイメント小説(番外編ではない完結編である)

この「番外編」での坊やは現役のギャンブラーではない。サラリーマンである。そして、主人公としては描かれてはいない。

主人公は、ギャンブルのためなら命と奪われることも厭わない、ギャンブルを最高の贅沢と考える男“李憶春”である。当然、戦後の混乱期でもない当時の世の中では生きてゆけない男である。「青春編」に登場するギャンブラー以上のギャンブラーといえる人物であろう。

ドサ健も彼なりに自分のルールに則って世の中を泳いでいるのだが、やはり昔とは違う。しかし、坊やもドサ健も、結局李憶春の世界に飛び込んでいく。彼に昔の自分の姿を重ね合わせたのか、ギャンブラーとしての血がそうさせたのか…。ラストシーンの物悲しさは、ギャンブルだけに生きようとして、時代に飲み込まれようとしている男達を描いたこの作品に相応しい。

この作品は番外編ではない。「青春編」に始まったこのシリーズは、「風雲編」を経て「激闘編」で一度区切りとなるのだが、シリーズの本当の完結はこの「番外編」である。それに値する内容とラストシーンである。その後発表された「新麻雀放浪記」は別の作品であろう。「青春編」から始まる4作品は、何度読んでも飽きることがない、日本が誇るエンターテイメント小説である。

作品の内容とは関係ないが、やはり、阿佐田哲也の作品のカバーは黒鉄ヒロシの絵が最も似合う。阿佐田哲也の作品の世界にピッタリの絵であるのと同時に、作品の主題を明確に表現している。

ドナウの旅人〈上〉
ドナウの旅人〈上〉
新潮社
price : ¥620
release : 1988/06

エンターテイメントとして楽しめる

すごく考えさせられるというほど深くはないが、
暇なときに本を読むという
エンターテインメントとしては素晴らしい作品のように思う。
上下800ページにもかかわらず、先をどんどん読み進めたいと思える
おもしろい作品。
ただ共産主義時代の話は時代錯誤感はある。
私の古寺巡礼〈1〉京都1
私の古寺巡礼〈1〉京都1
光文社
price : ¥700
release : 2004/10

文字で知る古都

「清水の心」大庭みな子
「ろくはら散策」杉本苑子
「けんねんさん」秦恒平
「知恩院の二つの顔」梅原猛
「南禅寺」杉森久英
「永観音夢告譚」杉本秀太郎
「歴史の充満する境域」司馬遼太郎

 古寺にはえも言われぬ風情があるもの。数々の名作を生み出してきた文人が、その景色や空気を文字に変えた。
 個人的なおすすめは司馬遼太郎。歴史を見る時の確かな目は、古寺をも美しく捉えている。
 行ったことが無くても、読めば眼前に京都が現れる。

勇気凛凛ルリの色
勇気凛凛ルリの色
講談社
price : ¥580
release : 1999/07

同世代だったのですね

雑誌に掲載されていたものを纏めた「勇気凛凛」シリーズの第1段。さりげない描写の中に、人生の機微が映し出されている名エッセイ。実は私も「ボッボッ僕らは少年探偵団」と唄った世代なので、著者とは同世代なのだろう。この歌を知らない世代がいるとは(自分の歳が)恐ろしい。

作者が自衛隊員だった話、乗り物酔いするタチで色々苦労した話。特に自衛隊員の時、戦車の中では苦労したろうなぁ。見かけに依らず酒は一滴も飲めない話(私と同じだ)。ギャンブルに関しては天才的な話、自衛隊員の時から小説家を志してコツコツ書き溜めた話。面白おかしく書いて読者を笑わせながらも、人生のあり方を示唆しているかのようである。巻末でオウム事件に触れて、オウム幹部の人生観の歪み、幼さを論じているが、著者のような信念の人にとっては当然の事だろう。

読む者を大爆笑させながら、文中に人生の機微を織り込んだ快エッセイ。


幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉
幻世(まぼろよ)の祈り―家族狩り〈第1部〉
新潮社
price : ¥500
release : 2004/01

作家の使命感が伝わってくる、重い作品

 重い話である。しかしこのテーマに正面から向き合って、ストーリーを語り尽くさなければならない、と言う作家の使命感が伝わってくる。凄い作家だ。昔だったら石川達三、ちょっと斜に構えたら倉橋由美子などが取り上げそうなテーマに思える。
 家庭内暴力を切り口に、親子の愛、対話の重要性、人同士の信頼とその回復など、いろいろな課題を筆者は投げかける。各登場人物には言動に至る理由があり、アプローチの仕方には硬軟があるが、みんなそれなりの正当性がある。彼らは自分の中の二面性に気づき悩み苦しむのだが、自分一人では問題を処理しきれず悶々として追いつめられてしまう。彼らを救うことが出来るのは対話が出来る相手だ。対話が理解を生む、まずは対話に至る道を切り開くこと。そういうメッセージも発信しているようだ。ここに作家の信じる人間の本来の姿、救いに至る道があるように思える。登場人物も読者も、そしておそらく作家自身も答えを見いだそうともがいている。・・・そんな印象を抱きながら読んでいると文庫版5分冊もあっと言う間だ。
そこに君がいた
そこに君がいた
新潮社
price : ¥380
release : 2002/06

青春時代の出来事・気持ちなどが書かれた一冊

辻氏の学生時代のエッセイ集です。

福岡県で過ごした小学時代から、帯広(小・中学校)、函館(中・高校)、東京(予備校・大学生)までの出来事を書いています。

辻氏のエッセイ「そこに僕はいた」が、時代ごとに会った人を章のタイトルとして書いてあるのに対して、こちらは、学生時代の出来事をテーマに書いてあります。

辻氏がロックバンド(エコーズ)、小説家、映画監督になった元となるような出来事やちょっと青臭い青春時代の出来事・気持ちなどを包み隠さず書いています。
炎立つ〈壱〉北の埋み火
炎立つ〈壱〉北の埋み火
講談社
price : ¥680
release : 1995/09

評価の分かれる作品

前九年後三年の役を描く異色作。
前半は前九年の役、つまり安倍氏の戦いを描き、第三巻で完結する。

前九年の戦いについて、比較的詳細かつ信頼できる歴史資料は、ほぼ『陸奥話記』に限られる。
この作品も当然、陸奥話記をタネ本として進行してゆくが、
随所にミステリ作家として、そして東北人としての高橋氏の解釈が加わる。

ただ、現在ではほぼ偽書であることが証明されている
”東日流外三郡誌”にインスパイアされたと思われる歴史解釈がある点は、少々気にはなる。
アラハバキ信仰や、環状列石の呪術的描写は、歴史小説というよりは、ミステリ作家としての高橋氏の顔が強く出ている。
思い入れを隠さずに熱く描く人物像は、東北人としての高橋氏の顔である。
こういった要素は人によっては違和感を感じるだろうし、好きな人はとことん好きになるだろう。
評価の分かれる作品と感じる。
炎立つ〈四〉冥き稲妻
炎立つ〈四〉冥き稲妻
講談社
price : ¥730
release : 1995/10

読むペースが速くなってきた。

この巻の主人公は経清の息子清衛である。まったくのフィクションなら、10〜20代の青年期に彼が活躍するように作るのだろうが,清衛の場合はなんと35歳になって初めてその正体を現す。その忍従,経清の妻結有にはさらに当てはまる。人間の執念というものはここまで凄いものかと思う。そしてその運命のなんと哀しいことか。義家もなかなか面白いキャラクターとして登場している。この巻に至って、真の主人公は既に「歴史」と「東北の土地」に移っていっているように思える。本当はもっとゆっくりしたペースで読みたいと思っていた。しかし、小説としての面白さがそれを許さない。最終巻の義経編楽しみである。
幼き日のこと,青春放浪
幼き日のこと,青春放浪
新潮社
price : ¥460
release : 1976/10

思いを馳せて

筆者の「しろばんば」「夏草冬涛」「北の海」を読んで、
その土台となっている実際の幼少期の生活を垣間見たく手に取った一冊。
土蔵での曽祖父の愛人との暮らし、おばあさんが作ってくれたライスカレーの話、
どれも皆ありありと目に浮かぶようつづられており、
懐かしい思いのする作品です。
菜の花の沖〈2〉
菜の花の沖〈2〉
文藝春秋
price : ¥620
release : 2000/09

嘉兵衛、持船船頭に

〜嘉兵衛は自分の持ち船を得、さらには二艘めも…。
たんなる幸運のようですが、
それに至るまでの嘉兵衛の眼識や船乗りとしての技量の評価があってこそ、
ということを忘れるわけにはゆきません。

作者が興味を持った導入ともいえる、江戸時代の日本の海運事情や、
各地の産業の発達、船の機構などについても実に勉強になります。
ここまでくると、小〜〜説というより、
高田屋嘉兵衛の一生に準じて当時の経済と社会と和船について語られたエッセイ、
という感じも呈しています。
どちらにしても面白いから良いのですが。〜

六つのひきだし―「森繁の重役読本」より
六つのひきだし―「森繁の重役読本」より
文藝春秋
price : ¥420
release : 1997/04

三面記事の男と女
三面記事の男と女
角川書店
price : ¥540
release : 2007/02

金毘羅
金毘羅
集英社
price : ¥2,100
release : 2004/10

笙野頼子の

 スタンスというのは尊敬するし、作品も好きなのだが、たとえば、この作品のように神様の話を滔々とされると、ちょっと嫌気がさしてしまう。
 スリップストリームの傑作、人間じゃなくて、自分が金毘羅だと気づいたことによって、生まれてからいままでを語るという、もう、傑作。
 なのだけれど、相性が悪かった。
老残のたしなみ―日々是上機嫌
老残のたしなみ―日々是上機嫌
集英社
price : ¥500
release : 2003/04

ショートショートの広場〈15〉
ショートショートの広場〈15〉
講談社
price : ¥520
release : 2004/02

様々な個性が楽しめる

 講談社の「小説現代」誌上で行っている「ショートショートコンテスト」の入選作を集めた作品集第15弾。
 様々なジャンルにわたり、多くの個性が楽しめる、ショートショートファン必読の書。
 阿刀田高の選評つきで、ショートショートを書いている人にも参考になる。
 「最高!」と叫びたくなる作品もあれば、「この程度なら自分にも書ける」と思うものもある。
 ショートショートの世界を盛り上げるためにも、是非皆さんに読んでいただきたい。
昭和史発掘〈1〉
昭和史発掘〈1〉
文藝春秋
price : ¥870
release : 2005/03

アルバイト探偵(アイ)調毒師を捜せ
アルバイト探偵(アイ)調毒師を捜せ
講談社
price : ¥540
release : 1996/01

涼介、ニヤリと笑う。

2冊目とあって、1冊目の良さは継承しつつ、1冊目以上に軽やかに自由に、冴木親子が大活躍します。
リュウ君のピンチを助け、事件を解決した後、いつもニヤリと笑うは、不良中年、涼介さん。その不良親父が、表題作では、死の危機に直面し、逆に息子に助けてもらうという事態に。いつもは軽いリュウ君も、さすがにマジになります。そして最終話ではついに、リュウ君の出生の秘密が明らかに…。ついにリュウ君のお母さんも登場?みどころいっぱい、楽しさてんこ盛りの超1級エンパラ(エンターテインメント・パラダイス)小説。
闇先案内人〈上〉
闇先案内人〈上〉
文藝春秋
price : ¥590
release : 2005/05

新たなヒーロー葛原が「熱く」駆け抜ける

2001年9月に発刊された作品。
2002年版このミスで6位、
2001年文春ベスト10で7位を獲得した。

葛原は国内でトップクラスの「逃がし屋」として依頼者を国外へ脱出させる活動をしていた。ある日彼の元を、警察庁警備局の河内山の使者が訪れる。「密入国中の某国の独裁者の息子を探し出すこと」これが葛原のグループの逮捕を見逃すための交換条件であった。しかし、その重要人物の密入国を支えるのは関西を代表する「逃がし屋」成滝。プロの意地をかけた追跡劇が、やがて国内外の熾烈な諜報戦に発展していく。

実際に起こってもおかしくないような設定の中を、大沢の描く新たなヒーロー葛原が「熱く」駆け抜ける。本作は、単なる冒険小説にとどまらず、「国家の在り方」「我々のもつ愛国心」にも問いかける作品に仕上がっている。

作者のHPで作品の一部を立ち読みできます。

六本木聖者伝説 (不死王篇)
六本木聖者伝説 (不死王篇)
双葉社
price : ¥700
release : 1996/10

江分利満氏の優雅な生活
江分利満氏の優雅な生活
新潮社
price : ¥420
release : 1968/02

ありがとうございました。『大人になるのは大変です』

 私は、勝手に山口さんを「人生の師」と仰いでいる。ややこしい事件に当たった時には、全巻そろっている「男性自身」シリーズを適当に取り出して、読んだり、そのダイジェスト版や「アンソロジー」を読んでいる。
 これらを読んでいる限り、「人生色々あるしね」「人生を半分しか生きていない」とポジティブな気分にさせてくれる。
 でも中学生が「週刊新潮」を読む環境なかったので、入門は、この本であった。
 押さないながら、「大人になるのは大変なことだ」ということと、「人間が一人前になるには何をすべきか、何をすべきでないか」をお教えいただいたように思う。

 タバコは止めましたが、酒は呑んでます。差し当たり元気です。師匠。


アルプスの谷 アルプスの村
アルプスの谷 アルプスの村
新潮社
price : ¥580
release : 1979/01