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歴史・時代小説
大盗禅師
大盗禅師
文藝春秋
price : ¥700
release : 2003/02

作者が全集に収録するのを拒んだという本作。いい作品だと思うんだけどなぁ。

摂津の国は住吉の浦で漁師の手伝いをして暮らしていた浪人剣客浦安仙八。幕府の浪人の取り締まりが厳しくなりはじめたころ、幻術を使う不思議の僧、大濤禅師に誑かされて由比正雪、丸橋忠弥らと、浪人のいない住みよい国を目指して幕府転覆の陰謀に突き進んでいくことになる。滅亡の危機に瀕している隣国・明を手助けして恩を売り、明の復興後、その兵力を借りて幕府を倒す計画を立て、海を渡り、国姓爺鄭成功と共に清軍へと突き進んでいく・・・。波瀾万丈の伝奇時代小説です。
物語の展開は先が読めず(なにせ明まで行ってしまいますから)、とてもおもしろい。また、二人の主人公、由比正雪と浦安仙八の人物像がすばらしい。言動は大胆で自信家、なのに小心で臆病者、すばらしく切れる頭を持っているくせに山師の雰囲気を漂わせ、門弟三千人を謳っていた由比正雪、本当にこんな性格だったんだろうと思えてきます。
かたやもう一人の主人公、浦安仙八は、剣の腕は一流ながら出会う人出会う人に影響を受け、ふらふらふらふら流され流されて、正雪に師事していたかと思えば明に渡って鄭成功に心酔し将軍の位まで授かってしまう。それでも「自分」を見つけられずに、さらに流される。
強い「自分」を持った男と、「自分」を見つけられずに流される男。二人が出会ったことで繰り広げられる壮大な物語。楽しめます。
ぬしさまへ
ぬしさまへ
新潮社
price : ¥1,365
release : 2003/05

シリーズ2作目の気合

しゃばけの第2作目ですね、短編が収められていて読みやすいです。
作者はこの頃はしみじみ系の物語に力を入れていたのでしょうか、一太郎の兄松之助を描いた「空のビードロ」などは、ちょっと山本周五郎もどきの悲しくってやがてあたたかくって泣く、と言った物語です。
新人の作者が気合を入れて書いていた、編集者がしっかりついていて「しっかり書かせた」と言う一作です。
今は人気作家になっていますが、作者のこの頃の一生懸命な感じ、ひたむきさ、いいですね。
宵しぐれ―隅田川御用帳
宵しぐれ―隅田川御用帳
廣済堂出版
price : ¥630
release : 2003/06

桜田門外ノ変〈下〉
桜田門外ノ変〈下〉
新潮社
price : ¥580
release : 1995/03

歴史の大転換を描いた快作!

桜田門外で大老井伊直弼の謀殺に成功した水戸藩士たち。実際の謀殺の現場はどうだったのか、その後の彼らはどのような運命を辿ったのか。主人公に据えられた水戸藩士・関鉄之介の目を透してことこまかに語られる。作者の綿密な取材と、当時の情景を生き生きと描き出す筆力でぐいぐい引き込まれていく。大作だが、ぜひ手にしてもらいたい作品だ。
王の挽歌〈下巻〉
王の挽歌〈下巻〉
新潮社
price : ¥500
release : 1995/12

桜田門外ノ変〈上〉
桜田門外ノ変〈上〉
新潮社
price : ¥540
release : 1995/03

吉村氏は…

吉村氏は主人公である関鉄之介の潜行先を実際に辿っている。氏のスタイルとして定番であるが、
丹念に史実を調べ上げたという背景があるせいか、骨太な筆致が冴えわたる。飽きない。充実した読後感が残る。
この作品を簡単言えば、クーデターに失敗した人間たちの悲しい末路の物語である。白黒で冷たく暗い。
水戸学VS開国派、尊王攘夷から尊王倒幕へと時代が移り変わって行く様子も淡々と描写している。
その精神を煽るようなわざとらしい所もない。少し調べてみたが、井伊直弼暗殺を扱った小説や映画などが
案外と少ない事にも驚く。その点でも本作品は重要である。
管仲〈上〉
管仲〈上〉
文藝春秋
price : ¥610
release : 2006/07

人間味のある偉人

古代中国の歴史ものでは、超人的な武力や知力が強調されがちだが、この作品では若き日の管仲の有能な面だけでなく、恋や親子関係、主君への忠義に悩んだ人間臭い面が丁寧に書かれている。
管仲の他にも、人間味のある魅力的な人物が多数登場し、現代社会での成功/失敗する人たちの縮図を見るような感覚にもとらわれる。
この時代の人たちが、どのように苦境を乗り越え大事を成し得たか、また彼らがどのような精神性をもっていたかは、なんとなく生きている現代人へのよい手本になりえる。
個人的には斉の行政に携わるようになってからの管仲の働きについて、もっと紙面を割いてほしかった。
遣手
遣手
光文社
price : ¥600
release : 2005/09/08

胡蝶の夢〈4〉
胡蝶の夢〈4〉
新潮社
price : ¥700
release : 2000/00

関寛斎について

この作品で初めて関寛斎翁の事を知った。かの翁が73歳にして全てを捨て、理想を求めて北海道に渡り、
開墾の鍬をふるったのが陸別という町である。これを知って驚いた。私の生れ故郷のすぐ近くの町であったからである。
読後、数ヶ月して田舎に帰った時、陸別に赴いた。
小高い山の上、自然林の中に石碑が立っていた。蜂須賀家の名もあり、関寛斎を顕彰するものであった。
なぜか涙が出てきた。本来であれば、医学を以って新政府にも出仕し、日本の医学の発展に貢献するべき人だった。
しかし、関翁はその様な栄達を捨て、今でも寒さが厳しい土地へ入植し、そして自死した。
読者の方々はマイナス35度というのが想像できるだろうか。仏壇に水をあげたら、翌朝には全て凍っている。朝にはダイヤモンド・ダストが見られる。
川は凍り、音というものが無くなったような静寂。時折聞こえる木が、その中にある水分が凍って割れる音。
そんな所で老年になって自分の生き方を求め、真の理由は想像すべくないが、83歳にて毒をあおぎ死んだ関翁の生き方に只涙がでた。
関翁の事を知っただけでも、司馬先生に感謝する。
王の挽歌〈上巻〉
王の挽歌〈上巻〉
新潮社
price : ¥500
release : 1995/12

「武将」でも「英雄」でもなく「人間」

「信長の野望」では戦国大名は「天下統一」という目標が最初から設定されている。当たり前だが実際の人間の人生に目的はそもそも明示などされていない。「出世」という、現代人にもわかりやすい人生の目的を設定し、ただ戦国時代だからそれは他者の殺戮が必然的に伴うので、言い訳に「民のため、世のため」と主人公に唱えさせ、同時に頑張るおとっつあんを支え、癒す、現代でも以外と(この時代ならなおさら)ありそうもない家庭の絆を絡め、茶の間で安心してみれる大河ドラマ的歴史絵巻もそれはそれで悪くはない。しかし本書の帯にあるとおり大名といえど戦と領国経営だけが人生なのか?先ず己を救うというエゴを無視して人間は他を救おうとするのか?戦国乱世に「武将」で「大名」で、しかし「人間」である大友宗麟。生まれながらに「王」族として生まれた彼は、なるほど秀吉から見れば彼が血反吐を吐きながら掴み取った位置に与えられて座ることができた御曹司に過ぎない。しかし己の意志と無関係に王族の嫡子として、生まれた彼は、秀吉と異なり幼少から宿命的に「暖かさ」のある(殊に家族との)人間関係を悉く奪われ、長じて後は王として生きる為に自らもそれを手放した。それが故に突き落とされる地獄、積み重ねる業と欲、有るべき生き様を求める苦悩、見出した救いとそれに情け容赦もなく突き付けられる運命。描ききった本作は単なる「英雄」伝でも「武将」伝でもなく屈指の「人間」小説。求む大河ドラマ化。但し原作そのままで。
紅の肖像―土方歳三
紅の肖像―土方歳三
文芸社
price : ¥1,575
release : 2004/02

自由度が高くてワクワク

こういう自由度が高くて、生き生きした作品はかなり好き。
どこかでこの小説は時代小説じゃないと書かれてましたが、
実際そう思う。
気むずかしい表現や説明文で雰囲気を壊してしまうこともなく、
他の人も触れていますが、短編小説のようなテンポでサクサクいけます。

何にも束縛されず「飛んでる」って感じですか?
そんな自由な雰囲気が好きで、読んでいて最初から最後までわくわくしていました。
ただ楽しいだけじゃなく、心に残るシーンも多かったです。
言葉のセンスが高くて、今後ずっと心に残っていくんだろうなと感じられる言葉も多かったです。
私はかなりおススメですね。

柳生武芸帳〈下〉
柳生武芸帳〈下〉
文藝春秋
price : ¥990
release : 2006/04

剣豪小説の最高峰

この作品は過去何度も映像化されています。それだけ魅力的な題材という事です。武芸帳を巡り柳生十兵衛が、宮本武蔵が、霞の双生児忍者が正に「鎬を削る」死闘を繰り広げ次々と倒れる剣士達。魅力的な登場人物が繰り広げる一大ロマン。果たして武芸帳に隠された謎とは? 私の棺の中に入れて欲しい一冊。読まないで済ますに勿体ない大傑作です! あなたもぜひ一読を!
退屈姫君 海を渡る
退屈姫君 海を渡る
新潮社
price : ¥500
release : 2004/09

期待を裏切らないおもしろさ

四国の小藩、風見藩の正室めだか姫の活躍する痛快娯楽時代小説第二弾。
前作、将軍さままで巻き込んだ田沼意次との対決の翌日、またまたヒマを持て余していためだか姫、なにか退屈しのぎはないものかた思っていたところへ、庭の松の枝から女忍者のお仙がヒラリ。開口一番「天下の一大事だ!!」参勤交代で国許へ帰っていた藩主の時羽直重が行方不明との知らせを受け、幕府の決まりもなんのその、父である陸奥磐内藩主西条綱道から船を借り、一路四国は風見藩へと旅立つが・・・。
緊迫した一大事、なのにほのぼのとして温かい。語り口のうまさも前作どおり、めだか姫とその一の子分お仙、姫付きの老女諏訪とその思われ人の将棋指し天童小文五、さらには敵役にいたるまで、出てくる人々が溌剌と元気よく動き回りテンポ良く話しが進みます。めだか姫とその一党、藩主を見つけ出し無事大団円といくでしょうか?
前作『退屈姫君伝』がとてもおもしろく読めたので、シリーズ二作目の本書もかなり期待して読み始めたのですが、それを裏切らないどころか期待以上のおもしろさ。ただ、前作よりかなり短いのが残念でした。
柳生武芸帳〈上〉
柳生武芸帳〈上〉
文藝春秋
price : ¥990
release : 2006/04

読み出したら止まらないおもしろさ

戦乱も治まり、太平を謳歌しはじめた江戸三代将軍徳川家光の時代、将軍家剣術指南役柳生家に伝わる、それが世に出れば幕府の権威は失墜、再び戦乱の世に戻るほどの秘密が隠されているといわれる武芸帳を巡って、但馬守宗矩、十兵衛三厳、兵庫介利厳ら、当の江戸・尾張の柳生一族、疋田陰流の使い手、山田浮月斎の一派、滅亡した竜造寺家の再興を夢見る遺臣の一味、さらには老中土井利勝、松平伊豆守ら幕府の重臣たちも加わっての一大争奪戦。果たして誰が柳生武芸帳を手に入れるのか?そこに書かれている秘密とは?
有名無名、実在架空の剣豪たちが多数登場、誰と誰が仲間で誰が敵で、この人はなぜ武芸帳を狙っているのか、今は誰が武芸帳を手にしているのか、気を抜くとわからなくなってしまいそうなくらい次々と差し挟まれていく挿話の数々、命を懸けた真剣勝負の緊迫感、「剣を出世の道具にした」と、よく敵役にされる柳生宗矩の、一流の剣の腕を持ち冷静沈着、胸の奥に恐るべき鬼謀を秘めた本作での人物像などなど、魅力を挙げていったらきりがないくらい。
いやぁ、おもしろかった。かなり長い話ですが、読み出したらページをめくる手が止まりません。傑作です。
青嵐吹く
青嵐吹く
光文社
price : ¥600
release : 2005/03/10

下駄貫の死―鎌倉河岸捕物控
下駄貫の死―鎌倉河岸捕物控
角川春樹事務所
price : ¥700
release : 2004/06

面白かったです

このシリーズを買い始めた時にはすでにの巻が出ていたので
タイトルを見て”あぁーそうなのか…”と思いながら読んできました。

下駄貫は、政次が十代目を継ぐ事が面白くなくて功を焦って、、、
という事でなので、そこに至るまでにどんな葛藤や人間関係のこじれがあるのだろうかと
そこら辺にも注目して読んでいたのですが、
そこら辺がわりあいあっさり流されてしまいました…それが残念で星を一つ減らしました。

このシリーズはとっても面白いと思うのですが、
みんなイイ人でかっこいいんですよねぇ。そこが痛快さもともなって良いのですが、
もう少し人間くさく汚い部分があってもいいのかも、とも思う巻でした。


源太郎の初恋―御宿かわせみ〈23〉
源太郎の初恋―御宿かわせみ〈23〉
文藝春秋
price : ¥500
release : 2000/05

ほのぼのとする短編集

ご存じ、ファンの多い長寿シリーズ。
長いせいで、登場人物それぞれが落ち着いて何か起こりそうになく、毎回捕り物や人情の機微を描いた物語が続き、おもしろいものの、なんだか平凡になってきた、と感じていたところ。
そこが、江戸の四季を感じる描写と相まって、安定した人気を得ていることも承知しているのだが、ややもすると退屈になる。

今作では、東吾が隠し子?に思いを募らせたり、るいの妊娠から千春の誕生に至るまでの時期の話が納められており、ああ、また何かが変わっていくのだな、と感じさせる内容。
久々に星を多くつけたいと思う。

ないしょないしょ―剣客商売番外編
ないしょないしょ―剣客商売番外編
新潮社
price : ¥580
release : 2003/05

小兵衛ファンには物足りないかも

剣客商売の番外編であるこの作品は、お福という女性の波乱にとんだ半生を描いています。秋山小兵衛は最後のほうに出てきます。したがって、小兵衛ファンには少し物足りないかもしれません。
新選組〈下〉
新選組〈下〉
祥伝社
price : ¥830
release : 2003/10

夏の霧―隅田川御用帳
夏の霧―隅田川御用帳
廣済堂出版
price : ¥630
release : 2004/07

歳三往きてまた
歳三往きてまた
文芸社
price : ¥1,890
release : 2002/03

新しい角度。

幕末ものは中立?男性視点で書かれる物が多く、女性視点ものはまだ珍しい。土方が女性的かな?と思うところは少々あったが、これまでの幕末ものと比べて新しい風を感じた。私個人は同著者の「獅子の棲む国」の方が好きだが、土方歳三を軽く小説で読んでみたい、後半生を大まかに知りたい、という女性にお勧め。お勧めとして星5つ。
鬼平犯科帳〈20〉
鬼平犯科帳〈20〉
文藝春秋
price : ¥540
release : 2000/12

池波作品は、どれも甲乙つけがたいのですが

この本が、どうしても特別な一冊になってしまうのは、理由がある。第七話「寺尾の治兵衛」の中で、鬼平の科白にこんな下りがある。「……そのとき審判をつとめられたのは無外流の名人・秋山小兵衛先生で……」安永五年、老中田沼意次の下屋敷で、当時三十そこそこだった鬼平は、剣術大会で決勝戦まで勝ち残り、かろうじて優勝したらしいのだが、そのときの審判が、剣客商売の秋山小兵衛だったというわけ。ファンなら、思わずニンマリとしてしまうシーンなのだ。その翌年は、大会は勝ち抜きのスタイルになったらしく、小兵衛の息子大二郎が出場し、江戸の剣術界に華々しくデビューしたのだった。きっとどこかで、彼らはすれ違っていたりしたんだろうなあ、と、遠い時代の江戸の空に思いを馳せてしまうのである。
武士(おとこ)の紋章
武士(おとこ)の紋章
新潮社
price : ¥500
release : 1994/09

苦しいときこそ

 池波正太郎では「鬼平犯科帳」,「剣客商売」,「仕掛人藤枝梅安」が有名なシリーズものとしてありますが,短編集と
いえども侮れません。この本は,さまざまな男たちの生き様を描いた短編集で,例えば,仕事やプライベートでうまくいか
なかったり,特に人間関係に悩んだときに読んでみてください。
 学生時代に購入して10年も経つ本ですが,未だに愛読書になっています。
 「カッコイイ生き方ってこういうことなんだな」
 そんな気持ちになれる傑作揃いです。
恵比寿町火事―公事宿事件書留帳〈8〉
恵比寿町火事―公事宿事件書留帳〈8〉
幻冬舎
price : ¥600
release : 2004/12

くノ一忍法帖―山田風太郎忍法帖〈5〉
くノ一忍法帖―山田風太郎忍法帖〈5〉
講談社
price : ¥600
release : 1999/03

アイデアに唸らされます

奇抜な設定で常に読者を楽しませてくれる作者のエロティック路線作品。最後のオチは良く考えてあるが、基本的に秀頼の子を孕んだ「くノ一」が繰り出す、奇想天外なワザが読み所。

レヴューで書いても良いのか不明だが書いてしまうと、相手の男の精を吸い取るとか、男を「***」で包んでしまうとか、腹の中の胎児をくノ一から別のくノ一へ念力移動するとか、本当に良くこんな事考えるなぁ?というワザばかり。だが、こうした描写で読者を楽しませる点に作者の真骨頂があるのだ。脱線するが、本作はAV化されて、くノ一の一人として若き日の水野真紀が出ている。今となっては手に入らない幻のお宝だ。

文壇に媚びず、読者へ面白い作品を提供する事に生涯を掛けた作者のエロティック路線の傑作。
風流冷飯伝
風流冷飯伝
新潮社
price : ¥540
release : 2002/03

冷飯食いの大(?)活躍

江戸、第十代将軍徳川家治の時代、四国の小藩風見藩藩主の時羽直重は、先々代藩主よりの悲願だった山向きの城を海向きに替えようと画策、幕府に届け出ても却下されることは目にみえていたので、将棋公方と呼ばれていたほど将棋好きの将軍様に賭け将棋を提案、おもしろがった将軍様はこれを受けたが、これに驚いたのは幕府の重職たち。将軍様の相手は誰なのかと風見藩に密偵を送り出す。この密偵の男というのが、江戸で幇間をしていた調子のいい男で、風見藩士の次男三男、長男が亡くなって家の跡取りになるか他家へ婿にでもいかなければ一生芽の出ない、いわゆる冷飯たちとつるんで一騒動を巻き起こす。密偵幇間と冷飯たちの騒ぎの行方は?そして将軍様との賭け将棋の結果はいかに?
はじめて読んだ著者 米村圭伍の小説は『退屈姫君伝』、これですっかりファンになったのですが、本作のほうが『退屈姫君伝』より先に発表されていて、退屈姫君のシリーズで登場する人物たちが何名も登場していますので、順序よく読んだほうが楽しさも増すでしょう。と言いたいところですが、退屈姫君シリーズのほうではまだ結果がわからずに、この先どうなっていくのだろうと楽しみにしていた将軍様との賭け将棋の結果が本作には書かれています。発表順に本作『風流冷飯伝』から読んでいれば気にもならなかったでしょうが(賭け将棋の結果がどうなったかわかってしまっていても、退屈姫君シリーズは十分におもしろいですから)、何か一つ楽しみを奪われてしまったような気がしてしまいます。
著者の小説には他にも『面影小町伝』の主人公は、自称めだか姫の一の子分のくのいちお仙だったり、『おんみつ蜜姫』の主人公 蜜姫は、風見藩主時羽直重の先々代の時羽光晴と関係があったりと、つながりがあるのものが多いので、これから手をのばそうと思っている方は、ぜひ発表順に読んでいってください。
噺家のうまいはなしを聞いているような、読んでいてとても心地よい文体で語られる、冷飯たちの大騒ぎ。退屈姫君シリーズとは別に、本作で活躍した冷飯たちのその後もぜひ書いてもらいたいですね。
きまぐれ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ
きまぐれ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ
光文社
price : ¥560
release : 1996/04

悪党の裔〈下〉
悪党の裔〈下〉
中央公論社
price : ¥600
release : 1995/12

秋帆狩り
秋帆狩り
光文社
price : ¥600
release : 2006/10/12

おこう紅絵暦
おこう紅絵暦
文藝春秋
price : ¥540
release : 2006/03/10

ちょっと物足りないかな

千に一つの目こぼしもない、千一こと奉行所同心仙波一之進が、巨大な権力を持つ相手とやりあった『だましゑ歌麿』に続くシリーズ二作目。なのですが、主役は千一ではなく、元柳橋一の売れっ子芸者おこうと、足腰は弱くなったもののや槍の腕と口はまだまだ達者な千一の父、左門。ここに、まだ売れない浮世絵師、春朗(後の葛飾北斎)が加わって、江戸で起こった事件を解決していく、短編十二作が収録されています。
決してつまらなくありませんし、短編が嫌いなわけでも苦手なわけでもないのですが、『だましゑ歌麿』のような力の入った作品の後に読むと、どうしても物足りなさを感じてしまいます。命がけで事に当たり、北町のお奉行様に啖呵を切るほどの気概を見せていた仙波一之進が、本作では脇役に徹するどころか、おこうと左門に一歩も二歩も先んじられ頼りなく見えるのも物足りなさを感じる理由の一つです。
シリーズ次作『春朗合わせ鏡』は、主人公をおこうから春朗に替えての、やはり短編集とのこと、楽しみではありますが、千一を主役に据えた『だましゑ歌麿』のような力作長編を読んでみたいなぁ。
坂の上の雲 <新装版> 1
坂の上の雲 <新装版> 1
文藝春秋
price : ¥1,680
release : 2004/04/09

コンキチ&ナターシャの絵本ナビ

約1年かけて坂の上の雲を全巻読み終わりました、こんな年齢になって初めて
この本に挑もうと考えたのも歴史の勉強の集大成にするつもりで最後に
読もうと考えていたからでした、学校教育では全く習わなかった近代の歴史
西洋が列強だった時代に天祐に従って歴史を作り上げた先祖にやはり
尊敬と感謝を感じずにはいられない。
華々しい日本海海戦を私のような素人にわかりやすく解説をしてくださった

司馬遼太郎氏にもお礼を・・・息子に薦めます


新選組〈上〉
新選組〈上〉
祥伝社
price : ¥830
release : 2003/10

まさに「人間」新選組です

この森村版「人間」新選組はまさに「人間」新選組です。
幕末動乱期の中で最高の剣客集団と言われる新選組の中での複雑な人間模様や
新撰組隊士だけではなく、この時代に生きた人々の心理描写が
その時々の時代背景とともに、巧みに描かれています。
もちろん、斬って斬られての血なまぐさいシーンもありますが、迫力のある文章表現は、
さすが森村誠一氏です。
幕末に興味があり、時代小説が好きな方におすすめです。
孫文〈下〉辛亥への道
孫文〈下〉辛亥への道
中央公論新社
price : ¥720
release : 2006/03

中華民国設立まで

康有為と光緒帝の変法の動きにはじまり、武昌蜂起で中華民国設立まで。

保皇会と興中会の戦い、清政府が崩壊していく様子が克明に描かれています。

中国の近代化、そして、アジアの近代化に向けて、文字通り命懸けの戦いをした人々の奮闘が描かれています。

僕らの時代よりも過酷かつ高邁な使命感を持って生き抜いていた人たちがいたんだなあと思って感心しました。

流星のごとく 御算用日記
流星のごとく 御算用日記
光文社
price : ¥660
release : 2006/09/07

姉上と姉様がイイ!

第2巻の「姉様」に続き、第4巻では「姉上」が表紙に登場!しかも顔に大きな青痣つくって(笑)。
いちおう時代ミステリなんですが、評者なんかはキャラクター小説として読んでます。
今ふうに言うと「姉上」はショッピング依存症、「姉様」は摂食障害ということになりましょうか。この二人姉の「美人だが困ったちゃん」のキャラ造形はほんとに秀逸で、なんぼでもお話が展開しそうです。続編が楽しみで仕方ありません。
なお、主人公の親友の颯爽たる美男子ぶりも健在で、サービス満点です。
炎立つ〈壱〉北の埋み火
炎立つ〈壱〉北の埋み火
講談社
price : ¥680
release : 1995/09

評価の分かれる作品

前九年後三年の役を描く異色作。
前半は前九年の役、つまり安倍氏の戦いを描き、第三巻で完結する。

前九年の戦いについて、比較的詳細かつ信頼できる歴史資料は、ほぼ『陸奥話記』に限られる。
この作品も当然、陸奥話記をタネ本として進行してゆくが、
随所にミステリ作家として、そして東北人としての高橋氏の解釈が加わる。

ただ、現在ではほぼ偽書であることが証明されている
”東日流外三郡誌”にインスパイアされたと思われる歴史解釈がある点は、少々気にはなる。
アラハバキ信仰や、環状列石の呪術的描写は、歴史小説というよりは、ミステリ作家としての高橋氏の顔が強く出ている。
思い入れを隠さずに熱く描く人物像は、東北人としての高橋氏の顔である。
こういった要素は人によっては違和感を感じるだろうし、好きな人はとことん好きになるだろう。
評価の分かれる作品と感じる。
秀吉と武吉―目を上げれば海
秀吉と武吉―目を上げれば海
新潮社
price : ¥620
release : 1990/12

海賊と時代の戦い

本州と四国に挟まれ、外洋と隔てられた浪穏やかな瀬戸内海は、昔から日本の回廊と言うべき海だった。
大小無数の島々が浮かぶ細長い海には、そこを拠り所とする海賊たちがひしめいていた。
この”武吉と秀吉”は、そんな海賊の代表的存在として史上名高い村上水軍と、総帥武吉を描いた作品である。

村上一族は、能島・因島・来島を拠点として、狭い島々の間を縫うように行く船から
積荷を強奪したり、”帆別銭”と呼ぶ通行料をと徴収することにより生活の糧としていた、まごうかたなき海賊である。
時代は戦国、信長や秀吉といった中世的権力の破壊者が出現することにより、彼らの生活は一変してゆく。
楽市楽座、関所廃止、そして海賊禁止令である。

秀吉による天下統一が進められる中、瀬戸内海の物流を阻害する海賊の存在は許されなくなっていた。
海の治外法権は認められなかった。
この小説での武吉は、一本筋を通さねば気の済まない昔気質の海の快男児、
そして秀吉は新しい世に君臨する王者として、対照的に描かれる。
武吉はまさしく”滅びゆくもの”であったに違いないが、作者の城山氏は、
鉄の規律と筋を通した誇りを持つ海賊の総帥として、起死回生の執念を持って生きる人物として描こうとしている。
城山氏の小説にはよく見られるように、時代に翻弄される組織と人間の姿が、一つのテーマになっていると感じる。

が、個人的な印象として、どの登場人物も”海賊”というには線が細いような感を受けてしまった。それは文体のせいかも知れない。
体言止めや省略法の多用される文体は、海賊という言葉から連想させる生臭さより、青臭さを強く感じさせる。
詩的ではあるが、やや文体の好き嫌いは分かれるところだろう。
恋忘れ草
恋忘れ草
文藝春秋
price : ¥470
release : 1995/10

北原亞以子ファン必読の一冊

表題作「恋忘れ草」は、直木賞受賞作です。
才次郎の様子を見に行った主人公おいちは、偶然にも、その女房に出会ってしまい、才次郎の家に招かれる。そこで、女房という立場の強さと、娘に抱きつかれて父親の顔を見せる才次郎の姿をみせつけられてしまう。女房になれなかった主人公の哀感と悔しさが漂う作品です。その他、珠玉の短編集となっています。北原ファンならば、直木賞作品は一読しなくてはならないのではないでしょうか。
花はさくら木
花はさくら木
朝日新聞社
price : ¥1,785
release : 2006/04

北風をあんまり悪く書かないで・・・。

なかなか当時に生きていた様な感覚を与えてくれる優れた作品だと思う。思い切った冒険小説といったところか。
しかし、豪商といえば悪徳商人のイメージで、鴻池家や北風家を悪く描きすぎていないだろうか。特に北風家については司馬遼太郎の『菜の花の沖』でも取り上げられた様に、公共に尽くした兵庫の本家が有名で、本書で取り上げられた伏見の北風家は分家筋に当たる。鴻池家が伊丹の元々の本家と大坂の分家に分かれていた様に、北風家も海運業の主要拠点に分立していたのである。作中の北風荘次郎は、豊臣秀吉が作った秘密施設を利用して、悪事の限りを尽くし、最後は南蛮に逃げるとのオチがついている。しかし、今でも生活している北風家の子孫の存在はどう説明されるのだろうか?
また、本書で、伏見の北風を騙して舟遊びをするように描かれている与謝蕪村の最大のパトロンが兵庫の北風荘右衛門であるのだが・・・。

ペルシャの幻術師
ペルシャの幻術師
文藝春秋
price : ¥570
release : 2001/02

司馬デビュー作を含む最初期の妖しく官能的な短編集

司馬32歳から37歳ごろの最初期の短編小説を編んだものである。

幻術は司馬作品に繰り返し表れるモチーフのひとつで特に初期の作品に多い。本書も8作中6作は幻術や呪術をテーマにしたものだ。幻術に惑乱される主人公たちの精神内面の描写のためか、この頃の作品には純文学に近い香りがある。

筆者は「兜率天の巡礼」が気に入っている。古代ユダヤ人の日本渡来説を下敷きにしたもので、新聞記者時代の司馬が実際に遺跡を踏査して記事にした。その小説版である。ちなみに司馬の長編第3作となる「風の武士」にも同じプロットが使われた。

以下、発表年順に収録作品を紹介する。

【ペルシャの幻術師】昭和30年
 13世紀、蒙古軍のペルシャ遠征を背景に、ペルシャ人の幻術師と蒙古軍の若き王の戦いを描く。色彩や光、匂いの描写が実に官能的。

【戈壁の匈奴】昭和32年
 ジンギスカン最晩年にしてやっと西夏を征服する。その動機はひたすら「西夏の美女を抱きたい」というものであった。男の夢、執念のすさまじさを描いて印象的。

【兜率天の巡礼】昭和32年
 亡くなった妻は紀元前に日本に渡来したユダヤの末裔であった。何世紀もかけてギリシャ、中国をへて日本に渡った一族の歴史を追いつつ妻の面影を重ねていく。

【下請忍者】昭和34年
 もがいても抜け出せない貧しく虐げられた下忍の人生。

【外法仏】昭和35年
 呪術とあやかしの世界に迷い込んでしまった高僧の破滅。

【牛黄加持】昭和35年
 帝の后となった憧れの女性に安産の密教秘法を施す青年僧。息が止まるほど官能的。

【飛び加藤】昭和36年
 伝説の「超」忍者、加藤段蔵の伝。あまりにも凄まじい術ゆえに上杉謙信に疎まれ、武田信玄に暗殺される。

【果心居士の幻術】昭和36年
 こちらも伝説の「超」忍者、果心居士の伝。漂着したインド人の子で、幻術で秀吉の秘事を暴いたため殺されたという。
真剣―新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱
真剣―新陰流を創った男、上泉伊勢守信綱
新潮社
price : ¥940
release : 2005/11

楽毅〈1〉
楽毅〈1〉
新潮社
price : ¥620
release : 2002/03

諸葛孔明が理想とした武将楽毅の生涯を気品高く描き切った傑作

漢の高祖劉邦が好きだった武将でもある。
楽毅の魅力を一言で語るならば、
生きている限り諦めない不屈の闘志の持ち主であるということであろう。
忠臣楽毅と言われるが、君主がアフォの場合は亡命しているのが興味深い。
楽毅を乗り越えようとしていた孔明は、劉禅がアフォでも見捨てるわけにはいかなかったのだなと、
三国志ファンの私は思いました。
妻子見捨てる楽毅も私の壷にはまります。
男は世の為人の為に生きるべきざんす。

忍法忠臣蔵―山田風太郎忍法帖〈2〉
忍法忠臣蔵―山田風太郎忍法帖〈2〉
講談社
price : ¥620
release : 1998/12

忠義は正義か?

主人公、無明網太郎の存在感は薄いが無茶苦茶強い!
おそらく、山田風太郎の忍法帖シリーズの中でも、五指に入るほどの強さを持っている。
だが、そんな彼の存在感が薄いのも、忠臣蔵の話自体を問う物語だからだ。
物語の途中でも、大石内蔵助自身が主君の先を考えない殿中沙汰を批判するシーンなどは唖然とする。
忠臣蔵の話でありながら、忠義を美徳とせず、忠義に否定的に話が進むのだ。
そして、忠臣蔵の忍法帖なら、赤穂浪士対吉良家の戦いになるかと思いきや、吉良上野介の息子に当たる上杉家の内部抗争という設定も面白い。
物語後半の、最後のくノ一が仕掛ける赤穂浪士達への討ち入りを萎えさせる作戦は思わず読んでいて、「あ、赤穂浪士達は討ち入りを辞めるだろうな」と、歴史を覆すほどの説得力を持って進むのだが、それをひっくり返したのは……、とにかくこのシーンこそが、この物語の傑作にした最高のシーンであり、やりきれないが説得力のあるシーンだ。

余談だが、この物語に出てくる能登組十人衆の、浪打丈之進。
彼の忍法は、忍法帖シリーズ最も気色悪いので、この本を読むときに食事を取る事は辞めた方がいいと忠告しておきます。(いや、マジで)
異心!―古着屋総兵衛影始末〈2〉
異心!―古着屋総兵衛影始末〈2〉
徳間書店
price : ¥620
release : 2000/12

深川小町捕物控
深川小町捕物控
ベストセラーズ
price : ¥650
release : 2005/04

楽毅〈2〉
楽毅〈2〉
新潮社
price : ¥620
release : 2002/03

臣下がいかに優秀でも王が愚昧ではどうしようもない

趙の武霊王の直々の中山攻略始まる。
楽毅は戦い、勝ち続ける。しかし、彼の国中山国は滅亡への道を
突きすすむ。

人間は、困難の時に大きく飛躍するきっかけをつかむ。
この苦しい戦いの中で楽毅が学ぶこと。

それは、世界さえも揺るがす大きな力となっていく。
感動の中に身をおき、読み込む本です。

岡本綺堂妖術伝奇集―伝奇ノ匣〈2〉
岡本綺堂妖術伝奇集―伝奇ノ匣〈2〉
学習研究社
price : ¥1,470
release : 2002/03

まさに匣と言える、豪華な内容

 タイトルの通り、かなり豪華な本です。どこが豪華かと言えば、まず長編が二本、綺堂本人が翻訳を手掛けたゴシックロマンスの様な小説が一本、戯曲が四本、短編小説が三本、さらに随筆と解説がついて、本当にこれでもかと言うぐらいに完成度の高い作品が収められています。それも文庫サイズなのですから、我々読書家にとっては(値段や本の異常な分厚さはさておき)捨ててはおけない一冊なはずです。
 内容もまた素晴らしい。最近の怪談話やホラー小説はどうしても奇怪な出来事の数々が自分とはほとんど無縁な世界で繰り広げられるのに対して、この中に納められた作品はもっと親近感を与えるような感じです(時代背景、というもともあるのでしょうが)。妖魔に恋する人間あり、みずから邪の道に入る美女あり、夢と現実との境目を見いだせなくなる人物あり、怨霊と通じて仇を討つ女あり、狼にとりつかれて人を食らう女あり……と実に多彩。恐ろしくもあり、哀切でもあり、妖艶でもある世界観に引き込まれること請け合いです。
 是非読んでみてください。きっと、私達の生活とは違う軸で展開する物語に驚かれるはずです。
五年の梅
五年の梅
新潮社
price : ¥500
release : 2003/09

心にしみる

人は、生きている。悩んだり、恨んだり、悲しんだり、喜んだりしながら。作者は、日常に生きる人々の心情を細やかに描いている。時代物でありながら、時代物だと感じさせない。そこには、今の時代にも共感できる人々の姿がある。いつの時代も大切なのは、人を思いやる心なのかもしれない。人が人を思う時、そこからまた新たな人生が始まる。作者はそのことを静かに語っている。
春秋山伏記
春秋山伏記
角川書店
price : ¥560
release : 2001/11

素朴で面白い

山形県庄内地方出身の藤沢周平作品です。庄内地方の山伏がモデルです。山伏の荒々しく怪しいが、心やさしい存在が面白いです。村人のよろず解決といったところでしょうか。庄内地方の土着の風俗が伝わってくるようです。また、全編庄内弁で書かれており、味わいがあります。庄内地方の民話的な作品に仕上がっています。面白かったですよ。
新選組血風録
新選組血風録
中央公論社
price : ¥980
release : 1996/04

【商品詳細】

『竜馬がゆく』『燃えよ剣』の2作の長編小説が立て続けに発表された1962年(昭和37年)は、司馬遼太郎の目が「幕末」という動乱に向いていた年である。同年5月に連載が始まった本書は、その先駆けとなった作品だ。斎藤一、加納惣三郎、井上源三郎、沖田総司などの新選組隊士たちの生き様15編を、抑制の効いた筆致で描ききった連作短編集である。そこには、司馬が追い求めた「漢(おとこ)」の姿が息づいている。 生きては戻れぬ死闘を前にしながら、ひょうひょうと振舞う篠原泰之進。好きな女のために新選組にもぐりこみ、惨殺される深町新作。池田屋事変で一番の活躍をしながらも、その運命にもてあそばれているような寂しさを漂わせる山崎蒸。武芸で身を立てることに戸惑いながらも、敵方にひとりで切り込んでいく長坂小十郎。時代に逆らって生きる個性豊かな隊士たちは、いずれも無骨で、真っ直ぐで、さわやかだ。 なかでも、「沖田総司の恋」「菊一文字」で、沖田への不器用な心配りを見せる近藤勇と土方歳三の姿が印象深い。「総司のことになると目が曇る」近藤と土方の姿を、おかしみさえ滲ませながら人間臭く描くことで、司馬は、激しい風雲に飲み込まれざるをえなかった者たちの悲劇をいっそう際立たせている。新選組という「類のない異様な」集団を多角的な視座を用いてとらえた本書は、1個人の人生から、歴史の壮大なうねりを照らす司馬の持ち味が、いかんなく発揮された傑作である。(中島正敏)

爽やかなものを感じさせてしまう

土方や近藤、沖田、斉藤、原田といった新撰組のキャラクターが「燃えよ剣」より鮮明に、また(当たり前ですが)土方歳三が主人公だった同書より、幅広く人物が連作で描かれています。流石に文章はうなるほど上手い(これも当たり前ですけど)。

司馬氏は歴史的な評価は別として、志がピュアでその信念に純朴である人、純朴であることの意味は「私」のない人、信念を守ることに勇気と努力を続ける人が、とても好きなような気がします。「私」のない分、新撰組のようにやっていることがひどく殺伐としていたとしても、どこか爽やかなものを感じさせてしまうところが氏の卓越しているところでしょう。

この本だけでも十分ですが、新撰組を取り巻く当時の時代環境を知っていると、より読み方に深みができると思います。「燃えよ剣」でもいいと思います。
鹿鳴の声
鹿鳴の声
廣済堂出版
price : ¥630
release : 2006/09/16






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